中央調査報

トップページ  >  中央調査報  >  原子力発電の安全性・今後のあり方、再稼働に対する意識 ―「東日本大震災と原子力発電に関する全国世論調査」(2012年5月調査)から―
■「中央調査報(No.657)」より

■ 原子力発電の安全性・今後のあり方、再稼働に対する意識
―「東日本大震災と原子力発電に関する全国世論調査」(2012年5月調査)から―


 時事通信社と中央調査社は、2012年5月10日から20日にかけて無作為に抽出した全国の満20歳以上の男女4,000人を対象に、東日本大震災・福島第一原発事故から1年あまりを経過した時点の国民意識を探るため、「東日本大震災と原子力発電に関する全国世論調査」を実施した。
 東日本大震災と東電福島第一原発事故を受け、原子力発電の安全性、今後の原子力発電のあり方、原子力発電所の再稼働に対する意識などについて、調査員による個別面接聴取法により実施し、1,272人(回収率32%)から回答を得た。なお、本調査は、2011年3月の東日本大震災・福島第一原発事故の2ヵ月後の5月以降、同一仕様で8回実施した。

1.原子力発電の安全性に対する意識
 原子力発電の安全性に対する意識について、「まったく安全でない」を0点、「中間」を5点、「十分安全である」を10点とした10点満点方式で答えてもらうと、「まったく安全でない」とする「0点」が23.3%と最も多く、次いで中間の「5点」が21.0%、「2点」が14.3%、「3点」が13.8%と続き、「6点」以上の『安全評価』は8.6%にとどまっているのに対し、「4点」以下の『危険評価』は66.9%に及んでいる。「わからない」や「無回答」は除いた回答者の平均(点)は、『危険評価』の3点あたりの2.81点だった。

原子力発電の安全性に対する意識

 0から10までの回答尺度を便宜的に、0点を「強い危険評価」、1~2点を「やや強い危険評価」、3~4点を「弱い危険評価」、6~10点を「安全評価」と分けた構成比(%)でみると、66.9%と全体の2/3を占める「4点」以下の『危険評価』は、「強い危険評価」23.3%、「やや強い危険評価」23.0%、「弱い危険評価」20.6%と3グループに分かれる。
 性・年代別では、「4点」以下の『危険評価』は男性より女性に多く、0点の「強い危険評価」は女性の50代では31.9%、40代では30.6%に及び、特に女性の40代では1~2点の「やや強い危険評価」30.6%、3~4点の「弱い危険評価」17.7%を合わせると、『危険評価』は80%近くに達する。一方、男性では0点の「強い危険評価」は60代が21.7%、50代が21.4%と高いが、1~2点の「やや強い危険評価」や3~4点の「弱い危険評価」を合わせた『危険評価』は、男性の中では40代が最も高い。なお、6~10点の「安全評価」は、男性の20代(17.9%)や30代(18.3%)、次いで50代(14.3%)が高く、女性では40代(7.2%)が高い。

原子力発電の安全性に対する意識(性・年代別)

 第7回2012年4月以前の調査結果をみると、第6回2012年3月調査では0点の「強い危険評価」が27.3%と高くなっているが、第1回の2011年5月調査より「4点」以下の『危険評価』は全体の7割程度を占め、「強い危険評価」と「やや強い危険評価」、「弱い危険評価」の3グループに分かれる傾向は変わらない。

原子力発電の安全性に対する意識(各回比較)


 2.原子力発電の今後のあり方に対する意識
 原子力発電の今後のあり方に対する意識について、「速やかに廃止」を0点、「現状維持(中間)」を5点、「継続推進」を10点とした10点満点方式で答えてもらうと、「現状維持(中間)」の「5点」が21.8%と最も多く、次いで「速やかに廃止」とする「0点」が20.6%、「3点」が16.8%、「2点」が12.5%と続き、「6点」以上の『継続推進派』は8.7%にとどまっているのに対し、「4点」以下の『廃止派』は66.4%に及んでいる。「わからない」や「無回答」は除いた回答者の平均(点)は、『廃止派』の3点あたりの3.04点だった。

原子力発電の今後のあり方に対する意識

 0から10までの回答尺度を便宜的に、0点を「強い廃止派」、1~2点を「やや強い廃止派」、3~4点を「弱い廃止派」、6~10点を「継続推進派」と分けた構成比(%)でみると、66.4%と全体の2/3を占める「4点」以下の『廃止派』は、「強い廃止派」20.6%、「やや強い廃止派」19.2%、「弱い廃止派」26.6%に分かれ、3~4点の「弱い廃止派」が多い。
 性・年代別では、「4点」以下の『廃止派』は男性より女性に多く、0点の「強い廃止派」は女性の40代では27.4%、50代では26.7%に及び、特に女性の40代では1~2点の「やや強い廃止派」24.2%、3~4点の「弱い廃止派」25.8%を合わせると、『廃止派』は80%近くに達する。一方、男性では0点の「強い廃止派」は50代が23.8%、70歳以上が23.6%と高いが、1~2点の「やや強い廃止派」や3~4点の「弱い廃止派」を合わせた『廃止派』は、男性の中では50代が最も高く、次いで40代が高い。なお、6~10点の「継続推進派」は、男性の20代(16.7%)や30代(14.7%)、次いで60代(13.9%)が高く、女性では30代(7.5%)が高い。

原子力発電の今後のあり方に対する意識(性・年代別)


 第7回2012年4月以前の調査結果をみると、第3回2011年9月調査以降、0点の「強い廃止派」の増加傾向がみられ、第6回2012年3月調査では0点の「強い廃止派」が20.7%、1~2点の「やや強い廃止派」21.1%と高くなっているが、第1回の2011年5月調査以来「4点」以下の『廃止派』は6割台を占め、中でも「弱い廃止派」が3割程度を占めている。

原子力発電の今後のあり方に対する意識(各回比較)


 3. 原子力発電所の再稼働に対する意識
 定期検査で停止中の原子力発電所の再稼働について、「再稼働すべきでない」を0点、「中間」を5点、「再稼働してもよい」を10点とした10点満点方式で答えてもらうと、「再稼働すべきでない」とする「0点」が25.0%と最も多く、次いで、「中間評価(どちらでもない)」の「5点」が20.8%、「3点」が10.1%、「2点」が9.9%と続き、「6点」以上の『再稼働賛成派』は18.8%となっているのに対し、「4点」以下の『再稼働反対派』は56.7%と半数を超えている。「わからない」や「無回答」は除いた回答者の平均(点)は、『再稼働反対派』の4点あたりの3.37点だった。

原子力発電所の再稼働に対する意識

 0から10までの回答尺度を便宜的に、0点を「強い反対」、1~2点を「やや強い反対」、3~4点を「弱い反対」、6~10点を「再稼働賛成派」と分けた構成比(%)でみると、56.7%と全体の半数強の「4点」以下の『再稼働反対派』は、「強い反対」25.0%、「やや強い反対」16.7%、「弱い反対」15.0%に分かれ、『再稼働反対派』の中では0点の「強い反対」が多い。

 性・年代別では、「4点」以下の『再稼働反対派』は男性より女性に多く、0点の「強い反対」は女性の40代以上では3割を超え、特に女性の60代では1~2点の「やや強い反対」20.3%、3~4点の「弱い反対」18.8%を合わせると、『再稼働反対派』は70%程度に達する。一方、男性では0点の「強い反対」は50代が26.2%、70歳以上が25.5%と高いが、1~2点の「やや強い反対」や3~4点の「弱い反対」を合わせた『再稼働反対派』は、男性の中では40代や50代が高い。なお、6~10点の「再稼働賛成派」は、男性の20代(37.2%)、次いで60代(32.1%)が高く、女性では30代(15.8%)が高い。

原子力発電所の再稼働に対する意識(性・年代別)


 2012年3月調査や4月調査と比較すると、4月調査以降、「再稼働賛成派」が増えているが大きな変化は見られない。

原子力発電所の再稼働に対する意識(各回比較)


 4. まとめ
 原子力発電の安全性に対して、『危険評価』は70%弱に達するが、意識の強度は異なり、「強い危険評価」(23.3%)と「やや強い危険評価」(23.0%)、「弱い危険評価」(20.6%)のグループに3分される。原子力発電の今後のあり方についても、『廃止派』は全体の2/3(66.4%)に及ぶが、「強い廃止派」(20.6%)と「やや強い廃止派」(19.2%)、「弱い廃止派」(26.6%)に分かれる。また、停止中の原子力発電所の再稼働については、『再稼働反対派』は56.7%と全体の半数を超えるが、「強い反対」が25.0%、「やや強い反対」16.7%、「弱い反対」15.0%と分かれる。調査回別でも同様の傾向を示している。
 原子力発電の安全性、今後のあり方、原発の再稼働の『危険評価』や『廃止派(脱原発)』、『再稼働反対派』は男性より女性に多く、特に女性の40代などに多い。

(大阪支社 藤田 陽一)



1.調査の設計
(1)調査地域: 全国の市区町村
(2)調査地点: 21大市―43地点
       その他の市―95地点
       町村部―19地点
       合計―157地点
(3)調査対象: 満20歳以上の男女個人
(4)標本数: 4,000人
(5)抽出方法: 層化副次(三段)無作為抽出法(電子住宅地図を用いたエリアサンプリング)
(6)調査方法: 調査員による個別面接聴取法
(7)実施時期: 2012年5月10日~5月20日

2.回収結果
(1)標本数: 4,000(100.0%)
(2)回収数(率): 1,272(31.8%)
(3)回収不能数(率): 2,728(68.2%)
(4)回収不能内訳:
    転  居 153(3.8%)
    長期不在 17(0.4%)
    一時不在 988(24.7%)
    住所不明 20(0.5%)
    拒  否 992(24.8%)
    そ の 他 558(14.0%)

3.調査時期
(第1回)2011年5月13日~5月22日
(第2回)2011年7月7日~7月18日
(第3回)2011年9月1日~9月11日
(第4回)2011年11月3日~11月13日
(第5回)2012年2月2日~2月12日
(第6回)2012年3月2日~3月12日
(第7回)2012年4月6日~4月15日
(第8回)2012年5月10日~5月20日