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■「中央調査報(No.700)」より

 ■ 第8回「メディアに関する全国世論調査」(2015年)結果の概要


 公益財団法人新聞通信調査会(理事長 長谷川和明)は、2015年8月21日から9月8日に「第8回メディアに関する全国世論調査(2014年)」を実施しました。調査方法は、住民基本台帳から無作為に選んだ全国の18歳以上の5,000人を対象とした訪問留置法で、3,183人から回答を得ました。この調査は、メディアの問題点や評価、信頼度などを客観的で信頼の高い統計手法を用いて調査し、クロス・メディア時代における新聞の在り方を考えるデータを提供することを目的としたもので、2008年12月の第1回、2009年9月の第2回、2010年10月の第3回、2011年9月の第4回、2012年9月の第5回、2013年9月の第6回、2014年9月の第7回に引き続き、第8回目の実施となります。今年度のトピックとして、一つは憲法改正報道におけるメディアとの接触状況や評価、もう一つは戦後70年報道におけるメディア評価について質問しました。調査結果の概要は以下の通りです。

1.メディアの信頼度と印象
―各メディアの情報信頼度は横ばい。

 第1回調査から継続して質問している各種メディアに対する信頼感や印象について、今年度の結果を過去調査と比較し考察する。
 各メディアが発信する情報をどの程度信頼しているのか、全面的に信頼している場合は100点、全く信頼をしていない場合は0点、普通の場合は50点として、それぞれ点数で回答してもらった。その平均点の推移をグラフにしたものが図表1である。「新聞」は69.4点で昨年度調査の69.2点から0.2点の上昇となった。「NHKテレビ」は70.2点(昨年度71.1点から0.9点低下)、「民放テレビ」が61.0点(昨年度60.2点から0.8点上昇)、「ラジオ」が59.7点(昨年度59.7点から変化なし)、「インターネット」が53.7点(昨年度54.0点から0.3点低下)であった。いずれのメディアも前回調査から大きな変化は見られなかった。(図表1)

図表1 各メディアの情報信頼度(時系列)

 一昨年度調査から、メディア信頼度の変化の要因を見るため、この1年間で各メディアへの信頼感が変化したかを質問している。今回調査では、この1年間で「新聞」に対する信頼感が「低くなった」と答えた人の割合は、前回の10.2%から7.9%に減少した。「高くなった」が4.1%、「変わらない」が84.5%であった。「NHKテレビ」に対する信頼感が「低くなった」と答えた人の割合は、前回の7.5%から11.3%に増加した。「高くなった」が3.9%、「変わらない」が80.9%であった。(図表2)

図表2 各メディアの信頼度の変化(n =3,183)


2.新聞の閲読状況
―新聞閲読率は低下傾向が止まらず。

 人びとの新聞との接し方(読み方)も本調査の重要なテーマとして継続して調査を行っている。特定のメディアのユーザーや年代に偏らない国民全体を代表するサンプル設計を特徴としているため、新聞をはじめとする各メディアに対する人々の接触状況について偏りの少ないデータを得ることができる。ここでは、新聞(朝刊)とインターネットニュースの閲読頻度の経年変化について紹介したい。
 この1年で新聞を「読まない」と回答した人が26.1%と3.3ポイント増加し、5年前の2010年度と比較すると10ポイント近く増えたことが明らかとなった。「毎日」読んでいる人が52.8%といまだ過半数を超えているが、昨年度比で2.3ポイント減、2010年度からは9.0ポイント減となっている。一方、インターネットニュースについては、この1年で「毎日」見ると答えた人が36.2%と4.8ポイント増えている。2010年度との比較だと10.7ポイントの増である。調査開始以来続いている新聞離れの傾向は、この1年間でもさらに進んでいる。今後もこの傾向は続いていくと予想されるが、新聞を毎日読む人の減少がどの程度の水準で止まるのか、インターネットニュースを毎日見る人の増加がさらに加速するのか、今後の動向に注目したい。(図表3)

図表3 新聞とインターネットの閲読頻度

 さらに、新聞の閲読状況(頻度を問わず新聞を読むと回答した人の割合)を年代別に時系列の変化を追ってみると、この5年間に40代以下で顕著に閲読率が低下したことが分かる。5年前の2010年度に比べ、20代は22.5ポイント減となり閲読率は40.5%に、30代は18.6ポイント減で50.7%、40代は14.4ポイント減で67.4%になった。この1年間で見ると、最も閲読率が減少したのが30代で昨年度比11.0ポイント減、次に下げ幅が大きかったのが20代で6.0ポイント減、40代の5.9ポイント減がそれに続いている。(図表4)

図表4 新聞閲読状況(年代別)

 新聞の閲読率が減少する中、新聞の各記事の読まれ方はどのように変化しているか見てみた。「必ず読む」と答えた人が最も多かった順に「テレビ・ラジオ欄」(今年度46.4%、昨年度46.6%)、「地元に関する記事」(同33.1%、35.7%)、「社会に関する記事」(同25.3%、24.2%)となり、昨年度と順位、割合ともに変化はなく、生活に密着した身近な事柄に関する記事が引き続きよく読まれていることが分かった。
 次に、パソコンや携帯電話、タブレットなどで読むことができる電子新聞について聞いた。電子新聞の認知率(「現在、利用している」3.8%と「現在利用していないが、利用してみたい」10.9%と「利用したいとは思わない」63.2%の合計)は77.9%と、昨年度調査より1.8ポイント増加した。しかし、利用意向を聞いたところ、「現在、利用している」が昨年度3.0%から3.8%に0.8ポイントの増加、「現在利用していないが、利用してみたい」が昨年度12.5%から10.9%に1.6ポイントの減少となり、利用意向の伸びは見られなかった。一方、「利用したいとは思わない」が63.2%に上り、昨年度60.6%から2.6ポイントの増加となった。
 「現在利用していないが、利用してみたい」という人に、電子新聞が一カ月いくらくらいなら購読したいと思うか聞いたところ、「1,000円未満」が73.4%、「1,000 ~ 2,000円未満」が21.3%という結果となった。インターネットニュースが無料で見られること、宅配新聞紙とのセット価格の設定など低料金のメニューがあることもあり、「1,000円未満」に7割強が集中する結果になっていると思われる。ただ、現在の新聞の1ヶ月の購読料(朝夕刊のセットでおよそ4,000円)についてどう思うか聞いた結果を見ると、「かなり高い」「少し高い」と答えた合計が45.2%となり、半数近い人が購読料を負担に感じていることが分かった。一方で「妥当」との回答が51.8%と半数強を占め、必ずしも価格だけが「新聞離れ」の要因になっているのではないと考えられる。年代別に見ると、「かなり高い」「少し高い」と答えた合計は20 ~ 30代では5割以上(50.0%~51.5%)となったが、他の年代では4割台(40.0%~47.7%)となり、40代以上の年代では「かなり高い」「少し高い」と答えた合計の割合を「妥当である」の割合が上回った。調査開始の2008年度から昨年度までは「かなり高い」「少し高い」と答えた合計の割合が5割台で推移していたが、今回調査で初めて5割を下回った。とりわけ40代以下では昨年度調査で「かなり高い」「少し高い」と答えた合計の割合が6割台となっていたが、今回調査では5割前後に低下した。


3.インターネットと将来の新聞の役割
―新聞の役割減少派、役割持続派を上回る。

 インターネットの普及が新聞に及ぼす影響についても2009年の第2回調査から継続して質問を行っている。「インターネットなどの普及により新聞の役割が少なくなってくる」と「今までどおり、新聞が報道に果たす役割は大きい」という二つの意見のどちらに賛成するかを質問している。昨年度の調査で、この質問を始めた2009年以来、初めて役割減少派が役割持続派を上回った。今回調査でも「新聞の役割が少なくなってくる(役割減少派)」が43.0%となり、「新聞の果たす役割は大きい(役割持続派)」の39.8%を上回った。昨年度と比べると役割減少派の割合は増えてはいないものの、新聞にとって厳しい結果である。(図表5)

図表5 将来の新聞についての意見(時系列)


4. 報道の自由について
―「報道の自由は常に保障されるべき」8割超す。

 世論を二分した安保関連法案の国会審議・強行採決は、我が国の民主主義・憲法・国防について国民的議論を広く喚起した。その流れの中で、6月の自民党内の勉強会での与党議員による報道圧力発言問題で顕在化したように、国民と政治の関わりについてのみならず、報道機関と政治の関係について改めて問われた一年となった。あなたは、報道の自由についてどう思いますか」と質問したところ、「報道の自由は常に保障されるべきだ」という意見に対し、「思う」と答えた人が83.2%、「思わない」と答えた人が14.0%という結果となり、「報道の自由」の重要性に対する認識は、広く国民一般に共有されていることが明らかとなった。一方で、「メディアは報道の自由を振りかざしていると思うか」については「思わない」と答えた人が51.7%と、「思う」と答えた人43.4%を上回ったものの現状のメディアに対して批判的な意見が4割以上であった。しかし、「現在の報道を見ていると、圧力をかけられても仕方がないと思うか」については、「思わない」と答えた人が60.4%に対し「思う」と答えた人が35.2%、「政府が国益を損なうという理由でメディアに圧力をかけるのは当然だと思うか」という質問については「思わない」と答えた人が67.8%に対し「思う」と答えた人が27.6%となり、政府が報道機関に対して圧力をかけることについて抵抗感を覚える人の割合は6割以上であった。政治から独立した報道を提供するジャーナリズムの役割は広く理解されていると言えるが、だからこそ現状のメディアに対する厳しい意見には真摯に向き合う必要があるだろう。(図表6)

図表6 報道の自由についての意見

 以上、新聞に対する国民の意識と実態について、今年度調査の結果を概観すると、信頼度や将来の新聞についての意識は、ほぼ昨年度(2014年度)から変化していなかった。2013年度から2014年度にかけて新聞に対して厳しい意見が増加したが、今回調査では2013年度以前の水準まで回復することはなかったものの、ひとまずは小康状態と言えそうだ。しかし、新聞の閲読状況という実態面では、より一層「新聞離れ」の傾向が顕著になってきている。新聞を取り巻く状況はなお厳しいが、「報道の自由」についての調査結果からは、政治から独立したジャーナリズムの役割を認める意見が国民の大半であることも明らかとなった。「新聞離れ」の潮流を一朝一夕で覆すことはできないが、ジャーナリズムとして果たすべき役割を着実に積み重ねていくことが新聞の未来の礎となることを示唆している。


5.憲法改正報道について
―憲法改正報道、民放テレビ躍進。新聞の憲法報道、コア読者には評価高い。

 本調査では、2013年度調査から3年間にわたって憲法改正問題と新聞報道について調査を行ってきた。まず、「あなたは、憲法改正問題に関心がありますか。」と質問したところ、「関心がある」と答えた人が74.9%(「非常に関心がある」27.3%と「やや関心がある」47.6%の計)、「関心がない」と答えた人が24.3%(「あまり関心がない」19.7%と「全く関心がない」4.6%の計)となった。過去2回の調査と比較すると、「関心がある」と答えた人の割合は、2013年度が69.7%、2014年度が69.9%となっており、去年から今年にかけて5.0ポイント増加している。 憲法改正に関する情報をどのメディアから入手しているか質問したところ、「民放テレビ」を挙げた人が65.5%と最も多く、以下、「N H Kテレビ」が61.2%、「新聞」が58.5%、「インターネット」が32.3%という結果になった(複数回答)。前回調査と比べると、民放テレビが7.6ポイント、NHKテレビが1.4ポイント、インターネットが6.5ポイント、それぞれ増加した。一方、新聞は1.8ポイント、雑誌・書籍は1.9ポイント、それぞれ減少した。
 また、憲法改正問題に関する情報で分かりやすいと思うメディアについても、「民放テレビ」が前回調査から5.2ポイント増の53.6%で最多となり、続いて「NHKテレビ」が45.5%、「新聞」が43.5%、「インターネット」が20.0%という結果になった(複数回答)。2013年度調査では、「情報を入手しているメディア」「分かりやすいメディア」ではともに新聞が1位であったが前回2014年度調査では、新聞・N H Kテレビ・民放テレビの差がわずかとなっていた。憲法改正問題への関心がより高まった今回調査では、情報入手しているメディア、分かりやすいメディアともにN H Kテレビと新聞の割合がわずかに減少したのに対し、民放テレビが躍進した。
 憲法改正に関する新聞報道への評価は、普段からどれくらい新聞を読んでいるかによって大きく異なることも分かった。憲法改正問題に関する情報を入手しているメディア・分かりやすいと思ったメディアを年代別に見てみると、年代が上がるほど新聞を挙げる割合が大幅に上がっていることが分かる。一方、インターネットは新聞とは逆に若い世代で挙げる者が多く、民放は他のメディアより偏りが少なかった。さらに、朝刊を読む頻度別に見てみると、新聞(朝刊)を「毎日」「週に4~5日」読んでいる者の間では、情報入手メディア・分かりやすいメディアともに新聞が1位であった。新聞を日常的に読んでいる人々の間では、今年も新聞の憲法報道が各メディアの中で最も評価が高かった。(図表7)

図表7 憲法改正問題に関する情報-入手メディアと分かりやすいメディア(性・年代・朝刊を読む頻度別)

 関連して、集団的自衛権に関する新聞報道に対する評価も質問したところ、「分かりやすかった」と答えた人が18.5%(「分かりやすかった」1.9%と「どちらかと言えば分かりやすかった」16.6%の計)、「分かりにくかった」と答えた人が22.1%(「分かりにくかった」5.7%と「どちらかと言えば分かりにくかった」16.4%の計)となり、「どちらとも言えない」と答えた人が56.9%と半数以上を占める結果となった。全体的な国民の評価は昨年度からほとんど変化していない。 性別に見ると、「分かりやすかった」と答えた人の割合は、女性が15.5%に対し男性が21.7%と、男性の方が6.2ポイント高かった。年代別に見ると、憲法改正問題への関心が他より高かった50代以上で「分かりやすかった」と答えた人の割合が2割以上(20.9%~ 22.6%)と多かったが、一方で60代と70代以上では「分かりにくかった」(60代26.8%、70代以上29.9%)が占める割合も多い。 国会で憲法改正問題が議論されていく中で新聞に期待する報道を尋ねたところ、前回同様、「現行の憲法について詳しく解説してほしい」52.1%、「政党の意見の違いがよく分かるような報道をしてほしい」50.4%を挙げる人が多かった(複数回答)。
 前回・前々回調査と比較すると、「海外における改憲の実情や、日本の現況に対する反応を詳しく報道してほしい」が29.2%(2013年度調査24.9%、2014年度調査26.5%)と増加したが、2013年度から2014年度にかけて増加した「国民世論を形成する中心的な役割を果たすような報道をしてほしい」は今年度は27.1%と減少した(2013年度調査21.0%、2014年度調査30.8%)。安保法案の成立など国民を取り巻く状況が変化する中で、人々が新聞報道に求めることも変化している。


6.戦後70年報道について
―民放テレビが健闘。

 今年は第二次世界大戦終結から70年目であり、新聞・テレビを中心に各メディアでは「戦後70年」をテーマとした報道が数多く見られた。「あなたは、「戦後70年」に関する事柄についてどのメディアから情報や知識を得ていますか」と質問したところ、「民放テレビ」を挙げた人が64.9%と最も多く、以下、「N H Kテレビ」が59.5%、「新聞」が57.4%、「インターネット」が25.4%という結果になった(複数回答)。調査時期の夏頃は、テレビ各局で太平洋戦争をテーマとした報道特集やドラマが放映されていたことが影響したと思われる。
 また、戦後70年に関する報道について、各メディアの印象を聞いたところ、N H Kテレビが「事実が正確に報道されていた」で53.7%、「公正・中立な報道がされていた」で50.5%、「他のメディアの情報より信頼していた」で47.0%、「この問題に対する報道姿勢がよいと評価できる」で45.8%と1位となった。
 民放テレビは「いろいろな立場の専門家の意見を比較できる」で49.1%、「難しい内容が分かりやすく解説されている」で47.5%、「自分の意見を持ったり、判断したりする時に、参考になった」で43.5%と1位になった。
 新聞は「事実が正確に報道されていた」(48.5%)、「公正・中立な報道がされていた」(41.2%)、「他のメディアの情報より信頼していた」(41.3%)、「この問題に対する報道姿勢が良いと評価できる」(40.0%)で堅調な支持を得た(図表8)。
 なお、「あなたは、「戦後70年」に関する報道でどのような点が好ましくなかったと思いますか」との質問では、「70年の節目というだけで取り上げている感じがあった」が41.6%、「どのメディアも同じような報道で差を感じなかった」が34.3%、「戦後70年から次の時代を考えるような報道がなかった」が32.7%となった(複数回答)。

図表8 戦後70年報道での各メディアの印象(複数回答、n=3,183)




 調査の概要
 ●調査地域
 全国
 ●調査対象
 18歳以上男女個人(5,000人)
 ●サンプリング法
 住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法
 ●調査方法
 専門調査員による訪問留置法
 ●実査時期
 2015年8月21日から9月8日
 ●調査委託機関
 一般社団法人 中央調査社
 ●回収サンプルの構成
 回収数 3,183(63.7%)

図表9 性年代別回収率